対戦艦用腐食型ミサイル・酸牙(サンガ)の詳細
基本スペック
分類 | 対艦・対施設用特殊化学兵器 |
弾頭 | 二重構造の化学カプセル(内層:酸化剤、外層:腐食促進剤) |
射程 | 150km(巡航ミサイル型)または潜水艦発射型 |
効果
着弾後、装甲を貫通せずとも表面で破裂し、超高濃度の腐食液を散布
液体は毛細管現象で装甲の隙間に浸透し、内部構造を破壊
数時間後、艦内の配線がショート、燃料パイプが破裂、機関停止
ストーリー
1944年の太平洋戦争末期、日本海軍は制海権、制空権をほぼ喪失し、敗戦の瀬戸際に立たされる。
そんな中、通常兵器では米艦隊に太刀打ちできないとして、「物理的破壊ではなく、機能を奪う兵器」の開発が極秘裏に始まった。
そして、早急に科学者が招集されその科学者たちからは、戦艦を腐らせることで弾薬を節約し、さらに米戦艦を沈める事が出来る兵器が考案された。
そして、導き出された答えが、「フッ化水素酸・過酸化水素・塩化鉄」の三層構造の腐食液を搭載したミサイルの開発だった。
戦艦の外装を溶かすことはもちろん、冷却給水のために供給されている海水にこの液体が混ざれば内部からの破壊も可能だと結論付けられたのだった。
1945年2月、対戦艦用腐食型ミサイル、通称「酸牙」が完成する。
翌3月、無人艦にて廃艦となった旧式駆逐艦に向けて、日本海近海酸牙の試作弾が発射された。着弾後、爆発音はなく、艦体が静かに崩れ落ちるように沈没していった。
調査隊は、甲板の鉄がまるで「溶けた蝋」のように変形していたと記録。この酸牙の成功は極秘裏に報告され、実戦投入可能との評価が下る。
しかし、同時に大きな問題が発覚する。魚類の大量死やサンゴの白化など、海中の生態系に甚大な被害が確認された。
また、腐食液の一部が海流に乗って拡散し、実験に立ち会った味方艦にも被害がでてしまった。そしてこの報告を受け、酸牙の実戦投入についての軍部会議が開催された。
会議には様々な意見が飛び交った。
ポイント
「すでに我々は、若者たちを神風として送り出しているのだ。ならば、鉄を喰らうこの酸牙こそ、最後の一矢としてふさわしいではないか!」
「だが、これは敵を殺す兵器ではない。海を殺す兵器だ。この液体が拡散すれば、三陸沖の漁場は壊滅し、国民は魚すら食えなくなるぞ。」
「私は科学者として、兵器の効果を保証する。だが、使うか否かは、あなた方の倫理の問題だ。」
「敵艦を沈める前に、我が艦隊が水を恐れるようになったら、それはもう軍ではない!」
「そんなことよりも、今、この日本の敗戦を目前に他に打つ手立てはないのだ!」
「もしこの兵器の存在が終戦後に露見すれば、仮に戦争で勝っても、我々は海に毒を撒いた民族として裁かれるだろう。」
その後、時を同じくして終戦の気配が濃厚となり、海軍上層部は使用を断念。
酸牙は非人道的兵器として全記録の焼却と試作品の海中投棄が命じられる。
終戦後、1952年、米軍の調査チームが日本海の近海で異常な金属腐食現象を発見する。
その後、酸牙計画の断片的資料がGHQによって回収されるも、誰も酸牙について、言及する者はいなかった。